金属が「加熱されることで物性(物理的な性質/硬さ・電気伝導率・その他)が変化する」ことは、「焼き入れ」や「焼き鈍し」などと呼ばれ、一般に良く知られています。しかし、「加熱」ではなく、「冷却」によっても物性が変化することは、まだあまり知られてはいません。しかし、「材料を極低温に冷却することで機械的な特性を向上させる技術」は、クライオジェニック処理と呼ばれ、高性能工具鋼工業の世界では、すでに一般的に認知されています。
今回、このプラグに行ったDCT処理とは、「デュアル・クライオ・トリートメント」の略称で、※(株)逸品館とAETとの共同研究によって実用化された、オーディオ・パーツ用途の特殊な冷却処理技術で、従来の「サブゼロ処理」と「クライオジェニック処理」の長所を組合せた特殊な冷却方法が特徴です。
DCT処理により極低温にさらされると、対象部材の構成原子や分子の熱振動が激減します。熱振動が減少すると、常温では熱振動によりバラバラだった原子・分子が、冷却により再結晶化するような形で、その配列が補正され、順序正しく再配列されるのです。(体積は減少しません)再配列により、部材内部での電気や、機械振動の伝播がスムースかつスピーディーになり、製品が持つ本来の性能が向上するのです。
この処理を原子や分子を「瓶の中の砂」に例えて説明しましょう。DCT処理前の原子や分子は、粒子がバラバラに配列され「状態が粗」になっています。この瓶に適度な振動を与えると、砂粒はバラバラの状態から、粒子が整って配列された「密」の状態へと変化します。振動が与えられたことで、砂粒が隙間無く再配列されたのです。これはおおざっぱなモデルなので、実際に起きる再配列とは異なっていますが、(砂粒の場合は、再配列により充填密度が上昇し、体積が減少しますが、実際にはDCT処理を行っても物質の体積は減少しません)再配列がどのようなものであるか、ある程度お解りいただけでしょう。しかし、処理を行おうとするプラグは、金属、合金、セラミックなどの様々な材料で構成されているため、物性改善には、その特性に合った極低温処理(温度管理)が必要となります。万一、温度管理を間違えたり怠れば、処理中に起きる「膨張・収縮」の影響でプラグが破損します。
そこで、すでにオーディオ用途に確立されたこの技術をカート用品のチューンナップに転用するため、我々はさらに綿密なデーター採取と、サーキット走行・レースなどの経験と実践を積み重ねることにより、最も効果的なプラグの処理方法と安全性を確立し、DCT処理プラグを完成させました。